財務省の広報誌ファイナンス10月号は東京大学公共政策大学院で行われた黒田東彦前日銀総裁の講演「財政金融政策に関する私の経験」を前編、後編に分けて掲載している。前編では、黒田氏が東大法学部を卒業して大蔵省(現財務省)に入省した1967年から、アジア通貨危機を経て財務官として為替の安定とアジア経済の復興に努めた2003年までのさまざまな経験について、エピソードを交えながら語った。
入省当時は大臣官房秘書課調査係に配属され、総合職の採用の手伝いや職員の研修などを担当した。その後、理財局国債課企画係長となり、71年8月にニクソンショックが起きて1ドル360円が崩壊、1ドル300円台へ円高に進んだ時期だった。日本政府は変動相場制から固定相場制に戻りたいと交渉、12月に再び1ドル308円で固定することができた。当時の黒田氏は「そうしたシステムは長続きしない」として変動相場制を主張し、この考えをファイナンスに書いたが「若気の至りでした」と述べた。
副財務官として92~93年に東京サミット準備に携わったこと、93~96年のバブル崩壊の影響を体験したことなどを紹介。97年のアジア通貨危機当時は国際金融局長だったが、アジア通貨基金に合意できなかったと振り返った。
■参考:財務省|黒田東彦前日銀総裁、東京大学講演「財政金融政策に関する私の経験」(前編)/広報誌「ファイナンス10月号」|
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202410/202410d.pdf